「“あなた”でなければならない理由」をつくる。 〜美容『師』の使命〜

南青山 Luxe 代表 板倉充様

※この記事は、2022年6月13日に実施したセミナーを編集・記事化したものです。

Luxe 板倉充氏が語る今後の美容業界・生き残り戦略セミナー
(南青山 Luxe 代表 板倉充様 KAMICHARISMA2つ星3年連続受賞))

<板倉充氏プロフィール>
渡英・渡米の後、都内サロンでエグゼクティブディレクターを経験し、2005年に南青山にLuxeをオープン。積み重ねてきた経験、「いち髪 に化粧 さん衣装」をキーワードに、“似合わせの独自メソッド”を構築し、再現性・保ちの良さを強みにした独自のカット技法を用い、常に造形学・トータルバランス学からお客様への期待以上のスタイルを提案。有名タレント、モデル、ミュージシャンがお忍びで通う美容室として、業界で一目置かれる存在。

―板倉氏が代表を務める南青山Luxeでは、昨年より、レミラプレミアムを導入いただいております。導入後の変化や、今後の業界動向、コロナ禍における集客、売上UP策やリピートにつなげるアプローチ方法、スタッフの教育育成など、幅広くお聞きしました。

自ら「美」を体現する意識

僕は今52歳ですが、リサスティーさんの機械でフェイシャルを2週間おきにしているので、肌はキレイじゃないですか?(笑)。僕は人をキレイにしてあげる立場なので、まず僕自身が「美」を体現できていないと、人にも提供できない。これが僕の考え方の軸なので、当然、自分自身のケアも気をつけています。

お店(Luxe)は17年目かな。今はLuxeとH.STANDというサロンの2店舗を展開させていただいています。

今の美容業界で、“あなた”が選ばれるための3つの思考

まず、業界動向とトレンドからお話しすると、みなさんご存じかとは思いますが、既にオーバーストア状態です。美容室は全国約25万店舗あり、コンビの約5倍とも言われています。歯医者も多いものの、7万軒程度です。

業界全体では52〜53万人もの美容師がしのぎを削っている状況で、かつコロナ禍において大事になるのは、“本質的思考”だと僕は思っています。

僕が日頃から大事にしているのは、3つの思考です。まず一つはロジカルシンキング=“論理的思考”。「なんとなくカワイイ」「なんとなく似合う」ではなく、お客様へのどんな提案にも、常にプロの美容師としてのロジカルさを持つこと。これは僕の軸とも言えます。

美容師の『師』は、師匠の『師』。お客様に美の『師』として問われる存在だからこそ、論理的思考を保つために、僕なりに常に勉強しています。

二つ目は、“差別化思考”です。先ほども言ったように、美容室はオーバーストア状態。数が多いということは“あなたのサロンが”選ばれるかどうか、もしくは“あなたが”選ばれるかどうかが強く問われます。

これはある意味、素敵なことであり、大変なことでもありますよね。「あなたじゃなきゃいけない理由」、「あなたのサロンじゃなきゃいけない理由」をつくれない限りは、非常に難しい。

そこで3つ目に重要なのが“本質的思考”です。世の中はどんどん本物志向になっています。お客様は様々なサロンを経験してあなたのサロンに来る。それに応えられるだけの本質的価値の提供と、その需給バランスが成り立たない限りは、お客様はリピートし続けてくれません。

例えInstagramやホットペッパー、様々な集客エンジンで入り口をつくったところで、僕らの仕事はリピートしてもらって“なんぼ”です。バズらせたところで、リピートされなければ永続的には続きませんし、一生涯のお客様になっていただくことも難しい。

だからこそ、この3つの思考が、美容師として絶対に必要だと僕は思っています。

プロとして選ばれ続けるために必要な、2つのこと

プロとして僕がこだわっているのは、“再現性”と“賞味期限”です。再現性とは、美容室に行った瞬間だけでなく、家でお客様自身がその髪の状態をつくれる、再現できること。それがお客様の願いです。

また、忙しい時代なので、カットしたデザインがどれだけ長く保つか=“賞味期限”も非常に重要です。通常、カットのデザインの保ちは、1〜1ヶ月半と言われていますが、僕は2〜3ヶ月は保つように考えて切ります。

デザインという面で美容師の仕事が難しいのは、スタイリストがサロンでつくり上げたデザインが完成形ではないという点です。ホームケアやお客様の日常生活次第で、また時間の経過とともにデザインは変わってしまう。

だからこそ、自分の仕事がどう商品価値を発揮し、世に出るかは、“再現性”“賞味期限”が非常に重要であり、その供給力をつけるためのスキルアップが必要なんです。

髪だけでなく、お客様の“全て”を素敵にする

リサステイーさんとは、1年前に人からのご縁で出会いました。これといって何かを探していたわけではなく、新しいメニューを考える必要性があったわけでもありません。

美容師は“お客様を素敵にする”役割であり、髪を通してその方を素敵にしていくのが仕事。でも、髪はあくまでも一つの道具です。カット、パーマ、カラー、トリートメントや髪質改善。様々なメニューがありますが、一番重要なのは「あなたのお店で、あなたに担当してもらったことで、お客様の『全て』が素敵になる」ことです。

カットし、デザインをつくる中で、僕は襟足のムダ毛も気にします。カットしたとき、髪を結んだとき、襟足が目に入ります。例えば電車などでも、髪型は良いのに襟足のムダ毛処理ができていない方は、意外と多いですよね。

男性でも、前から見ると完璧でも、襟足の毛がブワッとあるだけで一気にだらしがなく見えます。サロンで切って整える、剃ることももちろん可能ですが、「この毛、なくなった方が良くない?」と。

全身脱毛をされている方も多いのですが、襟足やもみあげはデザインも関係しますし、ゴルゴ13みたいな方、いますよね(笑)。そこをなくすだけで顔が小さく見えるのにと、いつも思っていました。

施術時間はたった2分。お客様に寄り添い信頼を生む

リサステイーさんから“美容室に脱毛機”と聞き、最初は驚きました。脱毛機は高額でエステサロン専用のものと思っていましたから。ところが機械はレンタルできて、月々のコストも安い。価格は自由に決められますが、うちでは襟足脱毛で3,300円。施術はたったの2分です。時間単価も非常によく、10人施術すれば回収できるコストと考えると、これなら導入できるじゃん、と。

僕はやると決めたことは、とことんお客様に提案するし、価値を実感して提案したものは必ず伝わります。結果、現在は40〜50人は毎月施術させていただいているので十分ペイできているし、何よりお客様のうなじが本当にキレイになっていく。それがすごいんです。説明通り、10回を越えてきたあたりから本当にキレイになります。

ヘアデザインとしての価値も上がり、お客様も襟足が気にならなくなる。見えないパーツだからこそ、こちら側がしっかり提案する。「あなたのデザインには、僕が責任を持っていますよ」という自負を持って提案すれば、自然と伝わります。

実際、求めている方は非常に多いですね。むしろ“美容室で脱毛”することに、美容室側であるみなさんの固定観念が邪魔しているだけです。大切なのは、好奇心や興味。新しいものに取り組んでいかなければ、衰退しかありません。

この機械は取り入れやすいと思うし、お客様に寄り添う姿勢が伝わり、信頼関係にもつながると思うので、とてもいい出会いだったと思っています。

美肌フォトで『美』をトータルサポート

この機械は美肌フォトもできるので、僕も2週間に一度はやっていて、スタッフも無料で使い放題。福利厚生です(笑)。スタッフの肌がキレイなのは、お店にとってもお客様にとっても素晴らしいことですよ。

「いち髪 に化粧 さん衣装」という僕なりのキーワードがあるのですが、人の第一印象として、無意識に見るのが髪です。ただ日本人は目を見て話をするので、目力という部分で必ず顔を見ます。外国の方は、口元を見てコミュニケーションする傾向がありますが、日本人は目を見るので、お顔全体が素敵に見えるかどうかが大切。

美肌フォトでお顔を素敵にできるということは、このサロンに来ればお客様をより素敵に仕上げられるということなので、非常に効果的だと思います。美肌フォトを別の場所で施術できるといいかなと思い、今後はそういう店舗もつくろうと考えているところです。

“本質的思考”で、時代に合わせた提案と選択を

本質的思考で考えると、僕らの仕事は髪型だけではもう古いんです。カラー、ブリーチ、ハイトーンが普通になれば、お客様の欲求はさらに高まります。また日本は少子高齢化が進んでいて平均年齢は49〜50歳。今後さらに白髪の方が増えることを考えると、白髪に対応してデザイン提案ができる美容師にならないと、生き残りも難しくなる。

こういった環境下で髪質改善などの提案だけでは古いし、傷ませてしまったものをトリートメントでごまかす、業界のなれ合い的考えも古い。傷みにくく良いカラー剤もたくさん出ています。単価は高額ですが、そこに価値を感じる人はしっかりお金を払ってくれます。

労働力をどこに割くか、人材育成も含め、より本質的思考で考えることをおすすめします。

コロナ禍でも好調。選ばれる続ける理由がある

コロナ禍でどう変わったか、よく聞かれますが、お陰様でサロンの予約は常に埋まっています。地方の方やご高齢の方の客足は減ったものの、30〜40代の方はご紹介で増えました。

サロンの平均単価は1万5〜6000円ですが、僕の単価は2万2〜3000円。コロナ禍で逆に単価は上がりましたね。お客様自体が、コロナ禍で収入が減るような不安定な状況だからこそ、より物事の本質を見てお金を使うようになっていると思うんです。だからこそ美容師も本質的な視点で提案すべきだし、それさえできれば、必ずお客様は戻ってきます。

実際にうちはこの考えで数字が出ていて、僕の月の売上は常に600(万)をキープしています。昔は1日に20〜25人切っていましたが、コロナ禍で15〜20人にしました。ゆくゆくは10人にしたいと思っていて、これもお客様をしっかりファン化できていれば必ず実現可能です。

リサステイーさんの機械も含め、「この人に任せれば素敵になれる」と信じてお客様はいらしてくれる。これが生き残りには重要なんじゃないかな。

好奇心と興味で、常にトライし続ける

二極化と言いますよね。数量を細かく重ねて売上をつくるか、単価を上げて、売上をキープしつつ労働力を減らすか。みなさん自身が変化しない限りは、後者にはなれません。一歩踏み出し、新しいものを取り入れる好奇心や興味を持つことが大事だと思います。

僕が人生で一番怖いのは、僕の興味がなくなることです。湧き上がる興味に従って何でもトライしてきた結果、現在まで、全てが良い方向に向かっていますから。

“美容室に脱毛器”という、既成概念を超えた発想も今の時代に合っていると思います。使いこなせるかは、みなさんのクリエイティブ力次第。でも簡単ですよ。光が出るので最初はパーテーションも置きましたが、意外と気にならないので今はパーテーションなしでやっています。それを見た他のお客様に「あれは何をやっているの?」と興味を持っていただき、「脱毛です」と話すきっかけにもなるし、「今度やってみたい」にもつながります。

時代を受け入れ、好奇心とクリエイティビティを育てる教育を

美容業界は、技術習得やスキルアップ、つまり育てることが仕事なので、それを楽しめないと難しいんです。多くの美容室で、新規顧客の集客と同じくスタッフの採用が課題になっているのは、昔とは時代が違うから。

今の20代の子たちは、率直に言って体力がありません。昔のように、早朝から終電がなくなるまで練習し、休日もモデルハントするような生活は厳しい。労働時間という面で、美容業界はグレーと言われてきましたが、今は保険や福利厚生、顧客満足だけでなく従業員満足も経営側が考えていかない限り、人は育ちません。

何より育成で問題なのは、彼らの興味が満たされすぎているということです。技術やスキルを向上させていく中で一番大事な、何かを学びたいという欲、好奇心が弱い。ただ、これは情報が氾濫している時代なので仕方がないんです。僕らの時代は情報が枯渇していたから、知りたい、得たいという欲求が強かったけれど、今は満たされています。これを受け入れた上で、経営者側はクリエイティブに、想像力を駆使する必要がある。

うちも練習は23時前までには終わらせ、週休も2日取らせています。僕のアシスタント時代からは考えられないけれど、もう変えられないものであり、逆に与えていくのが経営側の仕事だと僕は思っています。

育成というと技術視点で考えがちですが、僕は技術があっても、スタイリストとしてお客様から選ばれ、ご指名いただけるかというと、そうではないと思う。お客様から選ばれなければ収入も売上も上がらず、豊かになれなければ「この仕事を選んで本当に良かったのか」と迷う若者が増えます。

育成では、様々なことに興味を持たせることを、アシスタント時代から重視していただきたいですね。技術ばかりの作業員ではなく、ファッションやデザインをトータルコーディネートできる人材を育てるプログラムを、発想力をもってつくるべきです。

あとはデザインが面白くなるような技術の教え方ですね。人形のウィッグだけでなく、一人ひとり異なる人毛をデザインする楽しさを教える環境づくりを、目指して欲しいと思います。

経営陣こそ、常に攻めの姿勢で「考えるな、動け!」

インターネットで情報はいくらでも入る時代なので、経営側が、世の中の新しいものを攻めの姿勢で取り入れて、試してみることが重要です。この前見た映画の『トップガン』のセリフにもありました。「考えるな、動け!」みたいな(笑)。自分の直感や感覚を信じて、まずは取り入れてみる。その姿勢が上の人間にあれば、それを見た下の子たちもおのずとそうなります。

育成は鏡なので、発想力豊かな、創造性に富んだスタッフへと育ってほしいと思うなら、自分がその背中を見せるしかない。教育システムをつくったところで離れていくものなので、自分自身が新しいことにチャレンジし続ける姿を見せ、このサロンにいたいと思ってもらうことしかできないと思っています。

売上が伸びない?営業力がない?

サロンの場所柄によって様々な違いがあると思いますが、その土地のメリット・デメリットを分析し、その土地にない新しいものをあなたのサロンが提案できれば、お客様は必ず反応してくれます。

プレゼン力がないという話もよく聞きますが、まずはみなさんが、その商品を大好きになることです。スタイリング剤でもシャンプー剤でも、「みなさんが本気でそれを気に入っていますか?」ということが、すごく大事。

僕は脱毛機を入れたとき、脱毛も美肌フォトも全部自分で試し、本当に気に入るかどうかを大切にしました。「本当に気に入っているものだからこそ、あなたに使ってほしい」という思いは、自然とお客様に伝わり、その結果、売上も安定します。

「会いたい」と思われる“あなた”に、お客様は会いにくる

コロナ禍でオンラインが日常になったことで、逆にオフラインのものの価値は高まり、お客様の心理として、美容室に来る重要性は上がっているのを感じます。

なんとなくお客様を迎えるのでなく、やりたいことがあって来ているお客様の身になり、共感し、傾聴し、理解する。それをみなさんができていれば、お客様はあなたを必要として戻ってきてくれます。「会いたい」と思われる“あなた”になることで、数字が上がらないというみなさんの悩みも解決します。

僕はこれでやってきて、お陰様で予約取れないと怒られている状態なので、結果は確実に出ています。お客様からのオーダーが“おまかせ”のみだったら良くないですか?

僕はそこを目指して美容師をやってきたからこそ面白みがあり、今も続けられています。みなさんがそこを目指すのであれば、美容業界ももっと楽しくなるのかなと思います。

―参加者からの質問:

弊社では一人当たりの生産性が低いことが課題です。時間単価として従業員に意識させていること、スピードアップさせる秘けつはありますか。また、店舗を展開していく上で苦労したことや、現在に至るまで悩んでいたことがあれば教えてください。

スタッフの教育・育成の話だと思いますが、まず、リサスティーさんのメニューは施術時間が2分、美肌フォトも10分未満で、月額のレンタルです。お客様への提供価格は店舗で自由に決められます。

これらのメニューの市場価格は単価8,000〜10,000円くらいなので、マッサージやヘッドスパと比較して、時間も労働力を使わずに売上が上げられる。僕の中でこの機械を入れたことは大きく、非常に良い武器だと思っています。

生産性は、スタッフのレベルが上がればスピーディーになると思うのですが、ただ「スピードアップしろ」と言ったところで作業員になっちゃうんですよね。それよりも、短時間で高単価のメニューをサロン様でしっかり入れる、ということを目指された方がいいと思います。スタッフのフィジカル面を疲弊させずに、売上を上げることができますから。

例えば、カラー剤の種類もたくさんあります。今はあらゆる要素を網羅する、テクノロジーを駆使した良い製品をメーカーさんが出してくれています。原価が高い分、結果もちゃんと出るので、3倍の値段を出してでもやりたいと思うお客様は確実にいます。

「そんな高いカラー剤は誰もやらない」ではなく、それを決めるのはお客様です。スタッフに「早くやれ!もっと技術を磨け!」と言うよりも、お店として新たな選択肢を試す方が、余程早い解決策じゃないかな。

僕ら経営側の仕事は、スタッフの環境をつくってあげることであり、スタッフが健康で笑顔でいてくれることが大事だと思うんです。

この間も新しく4月に入った子に「6連勤は体がきついです」と言われました(笑)。たまたま、6連勤だったんでしょうね。彼らは、何でも口に出しちゃうんです。「サウナでも行った方がいいんじゃない?」と返しましたが、難しいですよね。技術を習得するには、営業時間外の朝や夜の時間を使って自分の技術を磨くわけですから。9時〜17時で働いて、昼はランチに行って夜は23時には寝たい、となると難しい業界ではあります。でも仕方がない。そういったことが普通に出てくる時代です。

できれば労働力を使わずに、テクノロジーを駆使して売上をあげられるようなもの、リサスティーさんもそうですし、色々なメーカーさんが様々な商品を出してくれています。ただ、それを受け入れる側のあなたが昔のままの感覚では、その子たちの未来はつくれません。これからは、確実に高単価を取れて、店が18時頃で終わる時代も来ると思います。土日が休みなんていう海外のようなことも、日本でも有り得るんじゃないですかね。

まあスピードアップは練習させるしかないですね。ただ、やらせる教育には強制力が伴うので、その辺りはパワハラに気をつけながら(笑)。

―参加者からの質問:

お店、ご自身についてのブランディングに関して、参考にしているブランドや人、学びなどはありますか。

憧れの人、メンターってよく聞きますね。確かにメンターは大事なのかなと思いますが、僕はちょっと変わっていて。憧れるとその人を抜けないので、憧れはつくらないんです。

代わりに自分の中でアバターをつくっています。例えば、『この人の話し方がいいな』『この人の雑学力いいな』『この人の表現力いいな』『この人のルックスかっこいいな』『この人めっちゃオシャレだな、何でだろう』と。分析しながら組み合わせて、アバターをつくっていますね。

自分のブランディングでいうと、美容師なので生活感を出さないこと。一般よりも浮いていないとダメだと思っています。

今どきの子たちは、オモロくないんですよ(笑)。例えばこのピアス、男性はあまり知らないと思いますが、ヴァンクリ(ヴァン クリーフ&アーペル)っていう女性の5大ジュエリーの一つだと思いますが、つけています。『男がヴァンクリ!?』というところですね。あと、手を使う仕事だからと、美容師はアクセサリーなしで職人っぽく想像されると思うんですが、逆に行っています、僕。ギラギラにつけますから。

どうすればオーラが身につくかとも聞かれますが、例えば芸能人でもそうですが、舞台に上がればオーラは出ますよ。舞台から下りたら弱まるわけです。何かというと、他人から見られる意識を自分が持ち続けられるかどうか、だけです。

僕は常に、家から出た瞬間から自分のことを見ます。“I Love Me”なんで。責任だと思ってやっています。コンビニに行こうが何をしようが、常にそのスタンスで行動します。オーラがあると言われるのは、見られる意識を常に自分の中に持っているからで、美容師の仕事は、生活感があってはダメだと僕は思うから。

『美』しい『容』姿の『師』という仕事をしているからには、ただの技術屋じゃないですよね。そこを人間の大事な能力の一つである“自覚”、をする。あとは意志や想像力。自覚して、自分をそこに持っていくっていうことが大事かなと思いますね。

―参加者からの質問:

少子高齢化が進む中で、美容業界はどのように変化し、どこにビジネスチャンスが生まれる可能性があると考えていらっしゃいますか。

高齢化社会ですよね。なるようになるんじゃないんですか(笑)。なぜなら、時代は勝手に変わっていきますから。それを先読みして受け入れ、対応していく力がみなさんにあれば、どうとでもなります。それには、みなさんがもっと色々なことに好奇心と興味を持つことです。

例えば政治経済、今は円安が進んでいますよね。134円なのが、今後80円、100円になるか?ならないですよ。日本という国は、世界で見ればマックスに落ちています。150円が当たり前になったとき、資産構築の方法も変わってくる。

美容師だから髪だけ、という時代ではもうないので、政治経済、資本主義社会、様々なことに興味を持って戦略を練っていくことで、おのずと方法は見つかると思います。

あとは、人脈をもっと拡げて色々な人に会ってください。美容業界で固まっていては駄目です。お店の話ばかりではつまらない。IT業界、人材業界、様々な業態の人の中に入れば、刺激になります。

自分で言うのも何ですが、美容業界だと僕は重鎮なんです。みんながペコペコしてくれるので、プラスにならないですよね。自分の鮮度が保てるように、色々な場所に行くといいですよ。そこで発見が生まれ、論理的思考と差別化思考、本質的思考を軸に時代を先読みしていく中で、方法論が生まれてくると思います。

今後は当然、高齢者が増え、平均年齢も上がりますよね。若い人たちがコミュニケーション能力を高められるように、もっと教育していけばいいでしょうし、人間は面白いということに気づいてもらえばいい。髪型だけではダメです。その人自身がオモシロくなって、“あなた”じゃなきゃいけない理由を、オーナーさん側がスタッフにつくれる環境を、頑張ってつくってみてください。

そのためには今からの延長が未来なので、今、何かをプラスしない限り未来は変わりません。僕も常に何かをプラスしています。そういった姿勢で一人ひとりが取り組んでいくとオモシロいのかなと思います。

―参加者からの質問:

カラーを重ねるごとに髪にダメージがかかると思いますが、そういった髪への縮毛矯正などの技術の困難は、どのように対応されていますか。

さっきもお伝えした、好奇心と興味ですよね。色々なメーカーに尋ね、そういったものに対応できるものを入れてもらい、自分で研究するしかないんじゃないですかね。結局は、体験です。生きた情報であり、経験こそが最大の教科書というのが僕のベースなので、何でも自分で試さないと。

僕は全部、お客様で試します。そもそも紹介客しか取っていないので、難しいお客様しか来ないんです。お客様は僕を信じてくれるので、僕がロジカルに行けると思ったものは、どんどん試します。

自分自身が勉強しないと駄目ですし、業界誌に書いてあることはつくられたものも多いので、信じ切ってはダメ。自分でやって感じるしか方法はありません。

先ほども言いましたが、カラー剤でも何に関しても、世の中に出回っているものをうのみにするのではなく、新しい髪を傷ませない方法を、本質的思考で探して使ってみる。高いですけどね。それを取り入れると意外と対応できると思いますよ。こればっかりは研究するしかないです。

僕はこのサロンをつくったときに、ヘアクリエイター、ヘアデザイナー、ヘアドクターという3大要素を軸にしました。ヘアドクターについては自分で徹底的に調べましたよ。あとは臨床の数、場数が質を上げるだけなので、ひたすらやってください。怖くても攻めてください。そうしない限りは何も知れないので、攻める姿勢が大事なのかなと思います。

―参加者からの質問:

美容業界全体で見て、各メニューをどれくらいの比率で展開し、また、その利益の構造をどのように展開されていますか。

難しい話ですね。僕ね、あまり気にしないんですよね。カラーはもう当たり前になっていますし、最近のトレンドとして、パーマヘアがやたらと出ていません?

それも全て仕掛けです。サイクルなので、今のパーマに飽きて伸びてくると今度はレイヤーを入れる。ウルフが流行ったら次はその襟足を切ってボブに戻す。そうやって回っています。

多様性やジェンダーレスの流れで、男性が昔のようには強くなくなり、女性が前に出てきた。女性が経済を高める存在になったことで『愛され髪』とは言われなくなった。だから今、ショートヘアーがめちゃくちゃ流行っていますよね。より個性的にもなっている。

情報もトップダウンではなくなり、多様性で横に広がっています。多様化した属性の中で、ニッチに流行っているものがあるので、自分のサロンをどこのポジションに持っていくかをちゃんと選択してください。例えばロングが得意なサロン、ショートが得意なサロン、カラー、パーマが得意なサロンなど。

メンズしかやらないお店もいっぱいありますよね。メンズサロンがなぜ流行っているか、答えは簡単です。常連を狙うならメンズを狙えという、絶対的な真理がある。男の人は『いつもと一緒がいい』という心理が働きます。食べ物でも何でも「どうします?」と聞かれたり、細かく答えたりしたくないんですね。「いつもの」が、めちゃめちゃうれしい、みたいな。だから美容室でもガチャガチャ聞かれたくないし、1回決めたらずっと同じサロンに行き続ける。切るサイクルも決まっているので、メンズサロンはすごく安定するんです。女性ほど情報にも詳しくないので、スタイリストも誘導しやすい。サロンでスタイリストになれるのも早い。

良い悪いではなく、女性は気分で変わる感情の生き物なので、そのサロンを気に入っていても、来なくなります。でも浮気しても本質には戻ってくる。そこを待てるかどうかです。サイクルも男性と違って3〜4ヶ月くらいは簡単に空くので、技術云々でなくとも定着させるのは案外難しい、これも時代性です。

これらを加味した上で、例えばメニュー展開にしても何でも「自分のサロンは、あなたは、何が得意なのか」「何を売りにしていくのか」、です。

僕は断然カットが得意。業界内でパーマを流行らせようとしているのであれば、パーマが取り入れやすい状態なので、パーマも行きますが、造形もカットで全部つくれます。

カラーブームの頃にスタイリストになった子たちは、パーマができない。今、パーマに取り組んでいる20代後半〜30代の子たちは、すごく新しいものとしてパーマを取り入れているんじゃないかな。僕らはPUFFYが流行った時代に、電話のコードみたいなパーマからやっているので(笑)、クリクリだろうがチリチリだろうが、おばちゃんパーマと言われた時代も生きているので、50代世代はパーマが得意です。

20〜30代にとって新しいからこそ、業界でパーマスタイルが盛り上がっているんじゃないですかね。前髪をあんなにクリクリにかけたら、僕らからしたらおばちゃんにしか見えないですけど、今の子たちは「かわいい!」となるので。

あと、女性の美容師にも言っておきますが、ダメですよ、太ったら。僕、厳しいですからね。「美」を提供する者が太っていたら、ダメ。お客さんにも言います、「髪型の前にまず痩せようか」と。これがお客様を素敵にする師としての使命なので。

その意識をみなさんが持てば、お客様の中での美容業界の価値はもっと高まると思います。ただの技術屋だから単価が上がらないんです。お客様に寄り添う、一生涯の『師』としてあなたがいる以上は、それなりの使命感を持って取り組んでください。

ちょっと厳しかったですかね?(笑)クレームが来そうですね。僕、こういう人なんだよね。傷つけないとみんな気づかないから。傷つけてほしい人は、どんどん僕のお店に来てください。怖いと思いますけど、色々な人が来ますのでね、ぜひ色々聞いてみてください。

ありがとうございました。

(※この記事は、2022年6月13日に実施したセミナーを編集・記事化したものです。)


開催日:2022年6月13日
主催:株式会社リサスティー
協賛:・株式会社オーエス(日本最大級の予約サイト、ビューティーパークを運営。掲載会社は今20万店舗を突破)
・合同会社BUZZBYZ(美容専門学校と美容室を結ぶ就活支援をし、就活イベントには、40店舗の美容室と学生500名を動員)

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